トップ >
ほかの音楽家たち >
ロマン派の作曲家は無調を避けた!?
知られざるエマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) を紹介するサイトです.
ロマン派の作曲家は無調を避けた!?
ChatGPT4o にバッハのフーガにおける半音階的旋律や無調との関係についてききましたが,それと関係してロマン派と無調との関係についてもききました.
「ロマン派の時代には無調になることをさける哲学あるいは理由があったのでしょうか?」
ロマン派の時代には無調になることを避ける哲学や音楽的な理由が確かに存在していました.それは,ロマン派音楽が持つ美学的・感情的な理想や,音楽が聴衆に対して持つ役割と深く関係しています.
1.感情表現の中心性
ロマン派音楽の主な目的の一つは,感情や物語を音楽で描写することでした.このため,次のような理由で無調は避けられました:
- 感情の方向性を保つ: 調性は感情の流れを明確にする役割を持ち,喜び,悲しみ,不安,安定といった感情の変化を表現するために必要不可欠でした.無調では,この方向性が曖昧になりがちです.
- 解決の感覚: ロマン派音楽では,緊張と解放のドラマが重要な要素であり,調性はその枠組みを提供していました.無調では解放感を得ることが難しいため,ロマン派音楽のドラマチックな性質と相性が良くありません.
2.聴衆との関係
ロマン派音楽は,一般の聴衆に理解され,感動を与えることを重視していました.
- 音楽の普遍性: 調性は当時の人々にとって馴染み深い音楽言語であり,聴衆が音楽のメッセージを理解するための重要な手段でした.無調に進むことで,音楽が「難解」になり,聴衆との距離が生じる恐れがありました.
- 物語性の維持: 多くのロマン派作品は,プログラム音楽 [標題音楽](具体的な物語やイメージに基づく音楽)やオペラと結びついています.これらの形式では,調性が音楽のストーリーを伝える鍵でした.
3.調性の拡張としての探求
ロマン派の作曲家たちは,調性を完全に放棄するのではなく,その限界を押し広げることで新しい表現を追求しました.
- 半音階と転調の利用: ワーグナーやリストのような作曲家は,半音階的な進行や頻繁な転調を用いて,調性の緊張感を最大限に高めました.しかし,最終的には調性に回帰し,安定感を与えています.
- 調性の拡張が目的: たとえば,ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》のように,半音階的な進行を極限まで追求する作品は,調性を超えそうな印象を与えますが,依然として調性的な枠組みの中にとどまっています.
4.哲学的・美学的背景
ロマン派時代の美学には,秩序と混沌のバランスを保つという考えが根底にありました.
- 調性と秩序: 調性は秩序を象徴し,音楽が自然の法則や神の意志を反映するという考え方に結びついていました.無調はその秩序を崩壊させるものと見なされ,ロマン派の作曲家たちにとってはまだ受け入れられないものでした.
- 人間の感覚との調和: ロマン派の作曲家は,人間の感覚や直感に訴える音楽を重視しており,調性の枠組みを超えることは聴衆に混乱をもたらすと考えられました.
5.無調への準備としてのロマン派後期
ロマン派後期(19世紀末)の作曲家たち(例えば,マーラー,リヒャルト・シュトラウス,そしてドビュッシー)は,調性の限界を押し広げる中で無調の可能性を模索し始めます.
- 調性の解体の始まり: ワーグナーの後期作品やマーラーの交響曲の一部では,調性の枠が薄れ,無調のように聞こえる瞬間が現れます.
- 20世紀の転換点: こうした調性の曖昧さは,最終的にシェーンベルクやベルクによる無調音楽や十二音技法へと発展しました.
結論
ロマン派時代には,調性を基盤とした音楽美学が音楽表現の中心にあり,無調はその哲学に適合しないものでした.しかし,調性の限界を探る動きはこの時代を通じて進行し,やがて20世紀初頭に無調が新たな音楽の言語として登場する下地を築きました.ロマン派の作曲家たちは調性を完全に放棄することなく,その枠内で最大限の表現を追求したと言えます.
このあとシェーンベルクが無調音楽を書いた背景についてもききましたが,そのなかでロマン派との比較をしています.