知られざるエマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) を紹介するサイトです.
エマヌエル・バッハの鍵盤協奏曲 Wq. 12(H. 415)は,1744 年に作曲された作品で,彼のベルリン時代初期の鍵盤協奏曲の中でも特に成熟した一曲です.この協奏曲は,ソロ鍵盤楽器と弦楽(ヴァイオリン 2 本,ヴィオラ,バス)という伝統的な編成を基盤としつつも,個性的で洗練された音楽的アイデアが盛り込まれています.
第 1 楽章では,劇的な序奏に続いて,明快で力強い主題が展開され,ソロパートでは華やかで技巧的な演奏が繰り広げられます.第 2 楽章は,多感様式に特有の内省的で感情豊かな旋律が中心で,静かで深い表現が印象的です.最終楽章では,軽快で舞曲的なリズムが支配的で,ガラント様式の特徴がよく表れています.
この作品は,ソロとトゥッティの調和が巧妙に設計されており,ソロパートには自由で創造的な要素が含まれています.Wq. 12 は,エマヌエル・バッハの作曲技法がさらに発展し,多様なスタイルを取り入れる中で,彼の独自性を確立した重要な鍵盤協奏曲といえます.
ヘ長調 H. 414/Wq. 12(1744 年作曲)の協奏曲では 『古風で力強い冒頭のトゥッティ(冒頭では意識的な模倣対位法,終結部では威圧的なユニゾンの旋律線を特徴とする)に続いて,ソロは全く異なる性格を持つ歌うような旋律で登場します.この楽章全体を通して,これら2つの音楽的性格が対峙し続けます.緩徐楽章では,この関係性が続きますが,最終楽章では,ソロが弦楽トゥッティとともに一瞬の活気あふれる奔走に巻き込まれます.
この作品は,父ゼバスティアンの伴奏付き鍵盤協奏曲と同様に,ソロ鍵盤楽器と 2 本のヴァイオリン,ヴィオラ,そして「バス」(恐らくチェロとコントラバスが重複するパート)によって構成されています.弦楽パートは,各パートにつき 1 人または 2 人で演奏された可能性が高く,このためこれらの協奏曲は,比較的大きな私邸の部屋で他の小規模な室内楽作品と共に演奏された可能性があります.