知られざるエマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) を紹介するサイトです.
エマヌエル・バッハの鍵盤協奏曲 Wq. 19(H. 423[422]) は,1746 年に作曲された作品で,彼のベルリン時代における鍵盤協奏曲の中でも特に注目される楽曲の一つです.この協奏曲は,ソロ鍵盤楽器と弦楽(ヴァイオリン 2 本,ヴィオラ,バス)の編成を基盤にし,ガラント様式と多感様式の融合が巧みに表現されています.
第 1 楽章では,明快で力強い主題が提示され,ソロとトゥッティが緊密に対話しながら展開します.ソロパートには華やかで技巧的な要素が織り込まれています.第 2 楽章は,抒情的で内省的なアダージョで,多感様式の特質が色濃く反映されており,深い感情表現が際立っています.第 3 楽章は,軽快で舞曲的な性格を持ち,ガラント様式のエレガントな特徴が際立っています.
この作品では,ソロとトゥッティのバランスが巧みに設計され,ソロパートの自由な表現と技巧が存分に発揮されています.Wq. 19 は,エマヌエル・バッハの鍵盤協奏曲の中でも形式的な完成度が高く,彼の作曲技法の成熟と個性が光る重要な一曲として評価されています.後の作品群への橋渡しとなる意味でも重要な位置付けを持つ作品です.
イ長調協奏曲 H. 422/Wq. 19 では,冒頭のリトルネロが,ヨハン・ゼバスティアン・バッハの第6番ブランデンブルク協奏曲の冒頭を思い起こさせます.独奏部分は,弦楽器と同じ音高から始まる旋律で登場しますが,テンポが半分の速さで進行し,そのキャラクターを変えています.このディスクに収録された他の2つの協奏曲においても,第1楽章の独奏部分の登場は同様の効果を持っています.これらの楽章で弦楽器が独奏部分を中断する際,それはしばしば両者を統一するのではなく,それぞれの異なる性質を際立たせるために機能しています.このように,エマヌエル・バッハは,同一の作品内で,伝統的なジャンルに深みと意味を与えることができるさまざまな音楽的関係を探求していました.