知られざるエマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) を紹介するサイトです.
エマヌエル・バッハの鍵盤協奏曲 変ロ長調 Wq. 36 は彼のハンブルク時代に属する明快で親しみやすい協奏曲です.全3楽章から成り,第1楽章では明るく堂々とした主題が提示され,鍵盤楽器とオーケストラが緊密な対話を繰り広げます.ソナタ形式を基盤としながら,彼特有のリズムの工夫と調性の変化が曲に活力を与えています.第2楽章は,多感様式の特徴がよく表れた緩徐楽章で,抒情的で情感豊かな旋律が中心となります.終楽章はロンド形式を基盤にした軽快で親しみやすい楽章で,鍵盤楽器の技巧的なパッセージが特に印象的です.この協奏曲は,古典派音楽への移行を示しつつ,エマヌエル・バッハの成熟した作曲技法と個性的な表現力を反映しています.演奏効果が高く,華やかさと深みを併せ持つ内容が,演奏者と聴衆の双方に楽しさを提供する一曲です.
変ロ長調の協奏曲 (H. 447/Wq. 36) は,バッハが1740年代後半から1750年代に培った協奏曲の後期の例にあたり,音楽的な表現力と形式的な洗練が際立っています.この作品は比較的選ばれた文化的な聴衆を意図していたと思われます.また,この協奏曲には管楽器のパートが用意されなかったようで,これは大規模で一般的なコンサートで演奏されることがなかったことを示唆しており,むしろより小規模で選ばれたエリート層の集まりに限られていたようです.