知られざるエマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) を紹介するサイトです.
エマヌエル・バッハの鍵盤協奏曲 Wq. 10(H. 413)は,1741 年に作曲された作品で,彼の初期協奏曲の中でも特に表現力が豊かで,多感様式への傾倒が顕著に表れています.この作品は,ソロ鍵盤楽器と弦楽(ヴァイオリン 2 本,ヴィオラ,バス)の伝統的な編成を持ちながらも,革新的な音楽的アプローチが際立っています.
第 1 楽章では,明快な主題とリズム的動機が交錯し,対位法と和声のバランスが見事に取れています.第 2 楽章は,多感様式の特徴が強く,深い感情表現と抒情的な旋律が印象的です.特にソロパートでは即興的な要素が取り入れられ,演奏者の技量を引き立てます.第 3 楽章では,舞曲的で軽快なリズムと明るい旋律が展開され,ガラント様式のエレガンスが際立っています.
この協奏曲では,ソロと弦楽が巧みに調和しつつ,ソロパートに自由で独自の表現が与えられています.Wq. 10 は,エマヌエル・バッハの初期作品ながらも後の成熟したスタイルの片鱗を示し,鍵盤協奏曲の発展において重要な役割を果たした作品といえます.