知られざるエマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) を紹介するサイトです.
エマヌエル・バッハの鍵盤協奏曲 Wq. 13(H. 417)は,1744 年に作曲された作品で,彼のベルリン時代初期を代表する鍵盤協奏曲の一つです.この作品は,ソロ鍵盤楽器と弦楽(ヴァイオリン 2 本,ヴィオラ,バス)による伝統的な編成を用いつつも,エマヌエル・バッハ特有の独創性と多感様式の特徴が表現されています.
第 1 楽章は,明確な構造を持つ主題と,それを巧みに展開するソロパートが特徴で,活力に満ちた音楽が展開されます.第 2 楽章は,静かで内省的な表情を持ち,多感様式の感情豊かな旋律が中心となっています.第 3 楽章では,軽快で舞曲的なリズムとエレガントな旋律が展開され,ガラント様式の優美さが際立っています.
この作品は,ソロとトゥッティの調和が優れており,ソロパートには即興的な自由さが与えられています.Wq. 13 は,エマヌエル・バッハの鍵盤協奏曲の中でも特に表現力と形式的完成度が高い一曲であり,後の作品への発展を感じさせる重要な位置を占めています.
ニ長調協奏曲 H. 416 (W.13)**の第3楽章では,各ソリスト部分が冒頭リトルネロの主題を変奏して始まることで,トゥッティとソリスト部分の関係が明確化され,楽章の全体構造を理解する手助けとなっています.一方,第1楽章では,トゥッティの主題を繰り返すのではなく,新しいソリスト主題が提示され,それが繰り返し現れることで,3つのソロ部分が導かれる構造になっています.[BIS CD 768]