知られざるエマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) を紹介するサイトです.
エマヌエル・バッハの鍵盤協奏曲 Wq. 23(H. 429[427]) は,1748 年に作曲された作品で,彼のベルリン時代中期における鍵盤協奏曲の代表的な一曲です.
第 1 楽章は,明るく生き生きとした主題で始まり,ソロとトゥッティが対話を繰り広げながら,技巧的なソロパートが音楽を彩ります.第 2 楽章は,多感様式に基づくアダージョで,内省的で感情的な旋律が中心となり,静けさの中に深い表現力が込められています.第 3 楽章では,軽快で舞曲的なリズムが特徴で,ガラント様式の優美さと明るいキャラクターが際立っています.
この協奏曲は,ソロとトゥッティのバランスが優れており,ソロパートには自由で創造的な要素が多く含まれています.Wq. 23 は,エマヌエル・バッハの鍵盤協奏曲の中でも特に構造的完成度が高く,彼の作曲技法が一層洗練されていることを示しています.この作品は,彼の後のより自由で表現豊かなスタイルへの発展を予感させる重要な位置を占めています.
ニ短調の協奏曲は,多くの人にファンタジアに匹敵する表現の強度を持つと感じられてきました.この作品は1748年に作曲され,戦争の混乱が始まる前の非常に生産的な時期の終盤に位置し,わずか10年間で20曲の協奏曲を完成させた中の一つです.この作品が広く知られるようになったのは,20世紀初頭に名高いシリーズ「ドイツ音楽の記念碑(Denkmaler deutscher Tonkunst)」で出版されたためであり,長い間エマヌエルの鍵盤協奏曲で唯一の利用可能な作品でした.そのため,19世紀以降,この曲は彼の協奏曲の中で最も有名なものとなりました.
この協奏曲はニ短調という調性と音楽的性格が特徴であり,モーツァルトの同じ調の協奏曲 [第 20 番] としばしば比較されます.特に第1楽章では,オペラ・セリアの様式を思わせる広い跳躍のメロディや,執拗な短調の和声進行が特徴です.第3楽章でも同様の特性が見られ,突然の不協和音で始まりますが,ソロパートが自らの異なる表現を提示し,第2楽章で準備された要素を引き継ぎます.これにより,和声的不安定さと明確な和声の定義が欠如したまま,強い表現効果を生み出しています.
演奏例: