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鍵盤協奏曲から他への編曲
知られざるエマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) を紹介するサイトです.
鍵盤協奏曲から他の楽器の協奏曲への編曲
エマヌエル・バッハの協奏曲には,鍵盤楽器,フルート,オーボエといった複数の楽器向けにアレンジされたものが多く見られます.これらの作品は,特定の楽器に特化して作曲されたものというよりも,複数の楽器で演奏できるように適応されたケースがほとんどです.
例えば,エマヌエル・バッハのフルート協奏曲やオーボエ協奏曲は,もともと鍵盤楽器協奏曲として作曲された後に,フルートやオーボエのためにアレンジされたものが多いとされています.その理由としては,鍵盤楽器(クラヴィコードやチェンバロ)が当時の彼の主な作曲の対象であり,それをもとに他の楽器向けに編曲することで演奏機会を広げるという意図があったと考えられます.
作曲順序のポイント
鍵盤楽器協奏曲が先に作曲された場合がほとんどです.その後,特定の演奏者や演奏機会のために,フルートやオーボエ向けにアレンジされました.
これらの背景には,エマヌエル・バッハが当時の多様な音楽市場や演奏環境に適応する柔軟性を持っていたことが反映されています.特定の楽器向けにアレンジすることで,作曲した音楽をより多くの聴衆に届ける戦略があったと考えられます.
鍵盤協奏曲と他の楽器の協奏曲との対応
エマヌエル・バッハのフルート協奏曲やオーボエ協奏曲について,それぞれの作品がどの鍵盤協奏曲に基づいているかを以下にまとめます.
フルート協奏曲
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フルート協奏曲 ニ短調 Wq. 22 [Wq. 22-1](H. 425 [H. 484-1])
- 元になった鍵盤協奏曲:
Wq. 23(H. 427)変ホ長調 [Wq. 22 (H. 425)]
- 元の鍵盤協奏曲を編曲してフルート協奏曲にしています
が,調性を変更しています.
-
フルート協奏曲 ト長調 Wq. 169(H. 445)
- 元になった鍵盤協奏曲:Wq. 34(H. 432)ト長調
- 調性は変えずに編曲されています.
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フルート協奏曲 イ短調 Wq. 166(H. 431)
- 元になった鍵盤協奏曲:
Wq. 35(H. 418)[Wq. 26 (H. 430)] イ短調
- 同一調性でアレンジされています.
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フルート協奏曲 変ロ長調 Wq. 167(H. 436)
- 元になった鍵盤協奏曲:
Wq. 32(H. 430) [Wq. 28 (H. 434)] 変ロ長調
- 調性も曲の構造もほぼ同じです.
オーボエ協奏曲
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オーボエ協奏曲 ヘ長調 Wq. 164(H. 466)
- 元になった鍵盤協奏曲:
Wq. 40(H. 455)ヘ長調 [Wq. 39 (H. 465) 変ロ長調]
- 鍵盤協奏曲の版と比較して,オーボエ向けに適した装飾やパッセージが加えられています.
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オーボエ協奏曲 ト短調[変ロ長調] Wq. 165(H. 468)
- 元になった鍵盤協奏曲:
Wq. 26(H. 430)ト短調 [Wq. 40(H. 455)ヘ長調]
- 調性は維持されつつも,オーボエの音域や特徴に合わせた変更が見られます.
共通点と背景
- これらのフルート協奏曲やオーボエ協奏曲は,基本的に鍵盤協奏曲が先に作曲され,後からアレンジされたものです.
- アレンジの際には,フルートやオーボエ特有の音色や技術的特徴を生かすために,装飾音やアルペジオなどの変更が加えられることが一般的でした.
- 鍵盤楽器協奏曲を元に,特定の演奏者や演奏機会に応じて作り直されるケースが多く,その際に調性が変えられることもあります.
エマヌエル・バッハのチェロ協奏曲についても,他の楽器向け協奏曲と同様に,鍵盤協奏曲からアレンジされた作品が多いです.以下に,チェロ協奏曲とその元になった鍵盤協奏曲との対応を示します.
チェロ協奏曲
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チェロ協奏曲 イ短調 Wq. 170(H. 432)
- 元になった鍵盤協奏曲:Wq. 26(H. 430)イ短調
- 鍵盤協奏曲の構造をそのまま引き継ぎつつ,チェロの技術や音域に合わせてアレンジされています.調性は同じイ短調が保たれています.
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チェロ協奏曲 変ロ長調 Wq. 171(H. 436)
- 元になった鍵盤協奏曲:Wq. 28(H. 433)変ロ長調
- 鍵盤協奏曲を基にしていますが,チェロに特有のパッセージや装飾が加えられています.
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チェロ協奏曲 イ長調 Wq. 172(H. 439)
- 元になった鍵盤協奏曲:Wq. 29(H. 438)イ長調
- 調性や曲の全体構造は鍵盤協奏曲とほぼ同一ですが,チェロに最適化するための工夫が施されています.
チェロ協奏曲の背景
- エマヌエル・バッハのチェロ協奏曲も,鍵盤協奏曲を基にしたアレンジ作品が多いです.
- 鍵盤楽器の協奏曲が先に作曲されており,特定の機会やチェロ奏者のために編曲される形で誕生したと考えられます.
- 当時のチェロは演奏技術や音色の可能性が広がりつつあり,こうした楽器向けのアレンジは市場の需要に応えるものでした.
補足
チェロ協奏曲では,低音楽器であるチェロの特性を活かすために,鍵盤協奏曲から転調を伴わずに直接アレンジされるケースが多いです.また,チェロの歌うような旋律表現を活かすため,フレージングや装飾に特有の改変が見られる点が特徴です.